女声アリアで巡る ヘンデル×メサイアの世界

 小此木里佳さんとの「巡る」シリーズ第2回。前回復活祭の日にマタイ受難曲を演奏し、今回はアドヴェントのはじまりの日にメサイアを。

 私個人は特定の宗教を信仰していないけれど、演者という己の中の人格で言うと、キリストにまつわるこの話へ没頭し尽くしたこの2度の経験は大変大きな糧になった。

 

 次回…第3回はガラッと趣を変えて、マドリガルなんかやってみたいねと話している。通奏低音勉強しなくちゃ…。急遽任された現場で弾くことはあるけど、基礎的な知識+雰囲気とイメージで弾いているので。違うんだ、しっかりガッチリ勉強して基礎を積んだ上で自由に動くべきなんだ…。

 

 

《プログラム》

 

第一部

 

1.Sinfony (pf solo ver.)

6.Air "But who may abide the day of his coming?" (soprano ver.)

13.Pifa (pf solo ver.)

14.Recitative "There were Shepherds abiding in the field,"

15.Accompagnato "And lo, the angel of the Lord came upon them"

16.Recitative "And then the angel said unto them,"

17.Accompagnato "And suddenly there was three with the angel"

18.Chorus "Glory to God" (pf solo ver.)

19.Air "Rejoice greatly, O daughter of Zion"

 

 

第二部

 

22.Chorus "Behold the Lamb of God" (pf solo ver.)

29.Accompagnato "Thy rebuke hath broken his heart"

30.Arioso "Behold, and see if there be any sorrow"

31.Accompagnato "He was cut off out of the land of the living"

32.Air "But Thou didst not leave His soul in hell"

38.Air "How beautiful are the feet of them"

44.Chorus "Hallelujah!" (pf solo ver.)

38.Air "I know that my Redeemer liveth, and that He shall stand at the latter day upon the earth"

 

アンコール

 

O holy night

 

 

 ピアノリダクションを弾くということに関して。演奏中のトークで少し触れたけれど、オーケストラを弾くことも合唱を弾くことも、どういう場面なのかによってもその構成は大きく異なる。

 今回は元々オーケストラのみのSinfonyとPifa、そして合唱曲を数曲弾いたけど、本来ピアノで鳴るはずでない音をどう表すか非常に苦心した。メサイアは学生時代に中村先生の指揮で勉強したからそれなりに体に入っていたし、以前得た知識にもだいぶ助けられたんだけれど、経験を積んだ「今の」私に聴こえる音、聴きたい音はそのまた先にあって(そういうのを一生やっていくんだけど)、随分鍵盤と睨めっこしたり、闘ったり、相談したりした。 

 

 そして歌い手が変われば当然弾き方も変わる。同じ歌い手でも、調子の善し悪しでまたガラッと変わる。

 そういう対話が本当に好きだ。

 

 

 

 

 曲集、オラトリオ、オペラ、組曲…

 いろんなものから抜粋して演奏することはとても多いけれど、実は大変な作業だったりする。今回も、女声1人とピアノ1台という縛りの中でどう物語を淀みなく進めるか、この曲は入れようか抜こうか、たくさん悩んだ。誰よりも小此木さんが悩んで、私は「音を出してから決めましょう」の段階で小此木さんと一緒に悩んだ。

 1曲、1音、ひとことあるだけで全く違う。

 

 生みの苦しみというわけではないにせよ、この悩みは大きく、しかし幸せなものであることに疑いはない。